20110811
チェルノブイリ(1)
● 今回のフクシマの原子力災害を体験してしまったからには、チェルノブイリは私たち日本人にとって、きわめて親密なシンボルとなったわけだ。今ではヒロシマとフクシマの間にチェルノブイリが神秘的な姿を現わしている。
チェルノブイリで起こったことは、ヒロシマでも起こるのではないか?
ヒロシマで起こったことが、チェルノブイリでも起ったように。
(1)
♦ (p.121) 「私はこわい。愛するのがこわいんです。フィアンセがいて、戸籍登録所に結婚願いをだしました。あなたはヒロシマのヒバクシャのことをなにか耳になさったことがありますか?原爆のあとを生きのびている人々のことを。かれらはヒバクシャ同士の結婚しか望めないというのはほんとうですか。・・・そんなお母さんが、私がチェルノブイリから移住してきた家庭の娘であることを知ると驚いたんです。『まああなた、赤ちゃんを生んでもだいじょうぶなの?』・・・『ねえあなた、生むことが罪になる人もいるのよ』・・・愛することが罪だなんて・・・子どもを生む罪。こんな罪がだれにふりかかるのか、あなたはご存じじゃありませんか?・・・」
♦ (p.135) 「私たちのくらしは、チェルノブイリのまわりをまわっています。あのときどこにいたか、原子炉から何キロのところに住んでいたか、なにを見たか、だれが死んだか、だれがどこに転出したか。いまでも、私たちは毎日チェルノブイリといっしょです。若い妊婦が突然亡くなります。病理学者は診断がくだせない。小さな女の子が首を吊る。五年生。これといった理由もなく。小さな女の子が・・・。すべてのことに対してチェルノブイリという診断。どんなことがおきても、みながチェルノブイリだという。私たちは非難をあびる。『あなたがたは恐れている。だから病気になるんだ。原因は恐怖心なんですよ。放射能恐怖症です』」
♦ (p.280) 「ある日、電話が通じて救急車がきてくれた。若い医者でした。夫のそばに行ったとたん、すぐにあとずさりした。『失礼ですが、ご主人は、もしかしたら、チェルノブイリ、あそこに行ってこられた方では?』『そうですわ』 医者はさけんだわ、誇張していっているんじゃないのよ。『かわいそうなおくさん、早く終わるといいですね、一刻も早く!ぼくは、チェルノブイリにいった人がどんなふうに死んでいくか、見たんですよ』 私の夫は、意識があってこれを聞いていたんです」
♦ (p.285) 「覚えているわ、夜、私は彼のそばにすわっていた。遺体のそばに、すると、とつぜん煙みたいなものが・・・。二度目は、火葬場で見ました。彼のうえにこのもやもやとしたものを。彼の魂・・・。彼の魂はだれにも見えなかった。でも、私には見えたんです。」
